特集
「成功するインド株」
著者 高橋正樹氏 特別インタビュー
 師走の風に追い立てられ、毎日慌しく時間が過ぎてゆきます。東京株式市場も日経平均1万5千円台を回復し、バブル期に迫る過熱ぶりです。そんな中、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?ここはひとつ、過去のバブル期の苦い反省から、少し冷静に投資の本質について、考えてみませんか?今週は高橋さん提唱の「イメージ・トライアングル」の復習から、テクニカル分析とは何かについて、お話を伺っています。大変興味深い内容です。是非熟読玩味下さい。
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第16回 「銘柄の投資価値」と「市場の期待」をイメージする

2週連続で「イメージ・トライアングル」のお話をうかがいました。非常におもしろいなあと思う半面、お話がかなり専門的で難しいというのが本音なんですが…。
高橋 まあ、確かに専門的と言えば専門的ですよね。でも「超大国の成長市場」への投資を実践的に考えるのであれば、ぜひともイメージ・トライアングルを理解し、活用していただきたいと思っています。 『成功するインド株』
それはわかってはいるんですけど…。『成功するインド株』読み返して、復習しているつもりなんですけど...。
高橋 困りましたね。実は、今週からは、さらに専門的なお話をしようかと思っていたのですが...。
えっ、さらに専門的なお話ですか…。あのー、私、インフルエンザにかかったみたいなので、今日はこれで失礼してもいいですか?
高橋 また、そういう底の浅いウソを…。だめだめ、逃げちゃだめですよ。ほら、SPのような強面の上司が睨んでますよ(笑)
ホントだ(汗)。ああ見えても、普段は優しい人なんですけどね。怒るとスゴイんです。鳥インフルエンザとでもいえば、許されるかしら。
高橋 性質の悪い冗談はだめですよ(怒)。日本じゃ、まだ、鳥インフルエンザに感染した人はいないでしょ?風説の流布や要らない不安をかき立てるのは厳しく罰せられますよ。真面目にいきましょう。
すいません。近頃あたし、働きすぎで...私生活がボロボロで…心優しき上司に相談してみます(泣)。
高橋 見るからに頼りになりそうですしね(笑)
上司(初登場) まあまあお世辞はイイから、インタビューの時間です。お仕事、お仕事、グワッハッハ!(爆笑)
高橋 じゃ、早速、気合いを入れていきましょう。
あまり難しいお話にならないようお願いします…。
高橋 多少、専門的にはなりますが、先週すでに予告をしておいたことですから、そんなに構えなくても大丈夫です。
予告ですか? そんなのありました?
高橋 そうですよ。来週以降、『成功するインド株』でも触れていなかった、「株を売買している市場(投資家)がどんな姿勢で投資価値を織り込んできているのか」について説明して行きましょうと言いましたよね。
はいはい。確かにそうでした。「銘柄の投資価値」とそれを評価する側である「市場の期待」の両方をイメージできてこそ、成果の上がる投資が可能になるとか何とか…。
高橋 ちゃんと覚えてましたね。なかなか感心じゃないですか。
ええ、仰っていることの意味がほとんど理解できなかったので、かえってよく覚えているだけのことなんですけど。
高橋 うーん、困りましたね。どこがわからないんですか?
「銘柄の投資価値」のほうはわかります。これはイメージ・トライアングルを使って、イメージするんですよね。
高橋 その通りです。イメージ・トライアングルは、わかりますよね?
と、思いますけれど…。
株価判断ツール ─ イメージ・トライアングル高橋 じゃ、念のため、復習しましょう。左の図にもあるように、イメージ・トライアングルの頂点の下には、株主資本や剰余金を意味する会社の1株あたり純資産(BPS)があります。このBPSは、その企業が収益を得るための土台になるものです。BPSをイメージしたら、これを土台に収益価値のイメージを広げていくんです。
ここがポイントなんですよね。「色の濃い三角形」はなんでしたっけ?
高橋 はい。次に「色の濃い三角形」ですが、これは比較的予想しやすい今・来期の1株当たりの当期利益(EPS)に相当します。「土台の四角形(BPS)」に「色の濃い三角形(今・来期のEPS)」を積み上げて、なおかつ「横に伸びる三角形(将来の価値)」合わせたものが、銘柄の投資価値です。全体の面積を土台の四角形で割り算したものが、株価純資産倍率(PBR)という有名な投資尺度です。ここまではご理解いただけましたか?
なるほど。さすがに3週連続で教えていただいたので、よくわかりました。
高橋 それはよかった。それじゃあ、先に進めますよ。投資価値はイメージ・トライアングルでイメージするんですが、その際に、今現在、その銘柄のトライアングルはどのようなトライアングルなのか、つまり、市場がどのような投資価値を織り込んでいるのかを吟味する必要があるんです。
「吟味」ですか? それは、どういうものですか?
高橋 トライアングルをイメージし、それを株価と照らし合わせます。もうちょっと実践的に言いますと、まず、現在の株価がイメージしたトライアングルとどう違うかを考えて下さい。
はぁ…。すみません、さっぱり意味がわからないんですけど。
高橋 じゃあ、少し言い方を変えましょう。今現在の株価の水準から、市場、つまり投資家が、その銘柄にどこまでの投資価値を織り込もうとしているのかを考えるんです。
むむむ。まだちょっと難しい気がします。
高橋 そうですか。もうちょっとわかりやすく言うと、今の市場は、自分が試算した投資価値が織り込もうとしている状況なのか、それとも、とっくに織り込んでしまっているのかを考えます。
これから織り込もうとしている状況ならば、この先も株価の上昇が期待できるのはわかります。でも、とっくに織り込まれている状況ならば、あまり大きな株価上昇は期待できないのでは...。
高橋 はい、そういうことです。要するに、その人自身がどんなに投資価値がある銘柄だと思っていても、その投資価値がどの程度のスピードで実現するかは、他の市場参加者がどんな投資価値を織り込んでいるかによって変わるわけです。
他の市場参加者が、どんな投資価値を織り込んでいるのかなんて、分かるのでしょうか?
高橋 これが分かるものなんですよ。
超能力かなんかで、ですか?
高橋 ええ、実はそうなんですよ(笑)。
もしかして、インドへのご出張って、超能力をつける特訓のためですか?
高橋 そうなんです。インドの山奥で修行して……って、私はレインボーマンじゃないんですからっ!
あの〜、そのネタ、あまりに古すぎて、わからない読者が多いと思うんですけど。
高橋 ええっ、古すぎますか(ショック)? まあ、いいか…。話を戻しますが、別に超能力を使うわけでも何でもないんです。テクニカル分析を使うんです。
テクニカルですか? 実は、ちょっとだけ知っているんですよ。マクドナルドの商品みたいな名前のヤツがあるんですよね?
高橋 MACD(マックディー)のことですね。
そういえば、そんな名前でした…。ところで、なぜテクニカル分析を使うんですか?
高橋 相場の心を読むためです。
また、そういう禅問答みたいなことを…。
高橋 でも、テクニカル分析って、そういうものなんですよ。そもそも、株価は投資家がつけた、その銘柄の投資価値の支持率みたいなものじゃないですか。
そう言われてみれば、そうですね。
高橋 その支持率の推移の結果、今の株価がついているんです。過去の株価についても同じことが言えます。だから、株価の推移を見ることで、その銘柄の投資価値がどう推移してきたかがわかるんです。
なるほど、そういうものなんですね。
高橋 ええ。たとえば、あまり業績のよくないAという会社があったとしましょう。A社に投資価値が見出せないのは、市場参加者のほとんどが知っています。ですが、テクニカルで株価を分析してみると、投資価値がないことを織り込んだ上で、今の株価がついているとしたら...。
そうか!ちょっとでも業績が上向いたら、A社の株価は跳ね上がる可能性がありますよね。
高橋 その通りです。株価が動く方向性や勢いを捉える。それがテクニカル分析です。繰り返しになりますが、株価そのものを分析することによって、相場を張っている側、つまりその銘柄の投資価値を高いとか低いとか考えながら、株を売買している人の織り込み具合がどのように推移しているかを分析するんです。
イメージトライアングルで企業の投資価値を判断すると同時に、テクニカルで投資家が何を考えて、今の株価がついているのか、この先の株価はどうなるのかを分析するというわけですね。
高橋 そういうことです。株の世界では、最終的には目先の状況に左右されるものの、長い目で見れば、投資家たちがその企業の将来を期待することで株価がつきます。だから、投資家が何を考えているかが非常に重要になります。
投資家たちのその企業への将来の期待が、ものすごく膨らんでいる途中なのか、それとも膨らんだ期待がしぼもうとしているのか、しぼんだ期待が膨らもうとしているのか、ずっとしぼんだままなのかを分析するのがテクニカルなんですね。
移動平均高橋 そうです。だいぶわかってきたじゃないですか。それをインド株と中国株とを比較しながら見て行こうと思うわけですよ。
それが、左のグラフなわけですね。なんか、2本くねくねしたラインがありますが、これをテクニカル分析に使うんですか。
高橋 ええ、そうです。移動平均線って言うんですけどね。次回は、この移動平均線についてお話しつつ、インド株と中国株のテクニカル分析をしてみたいと思います。
確かに、読者の方にとっては「次回」ですけど、私にとっては引き続きですが…。もう私の頭のキャパを越えちゃっているんだけどなぁ。
上司(再登場) 『成功する投資家』へのここが運命の分かれ道。なぁ〜んて「人生ゲーム」みたいなこと言ってますが、ここで頑張らねばいつ頑張るってことですよね。高橋さん。ちょっとブレイク入れて、頑張りましょう。はい、美味しいお茶ですよん。
上司自らお茶だしとは...ウググ...頑張ります(泣)。
上司(再登場) 気合だ、気合だ、気合だぁ〜。ナハハハハ。
高橋 いやぁ、美しい師弟愛だぁ、インドのお土産期待して下さいね。
一同 そりゃぁ、もう。とっても期待しています(爆笑)すっごいのを!。


>>次週へ続く


「成功するインド株著者 高橋正樹 氏 特別インタビュー」 記事一覧
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第16回 「銘柄の投資価値」と「市場の期待」をイメージする
  第17回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その1−
  第18回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その2−
  第19回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その3−
  第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−
著者近影 著者PROFILE
高橋正樹 たかはし・まさき
現職は「岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジスト」。
元:アイザワ証券投資リサーチセンター・アジア担当ストラテジスト(本書執筆時)。
1963年生まれ。
日系投信会社、米系投資顧問会社を経て、2005年10月より現職。
ファンドマネージャー時代の全米運用パフォーマンスランキングは、2002〜2003年の2年間でアジア株部門が100社中35位、インド株部門24位(2003年のみでは12位)。この成績で注目を集め、日本では数少ないインド株投資経験者としても知られる。インド証券取引所の招きで精力的にインドの企業訪問をするなど、インドの最新情報にもくわしい。
国際公認投資アナリスト
日本証券アナリスト協会検定会員、検定テクニカルアナリスト


書影
書籍DATA
The Secret Of Success For The Indian Equity Investment
成功するインド株
出遅れない・失敗しない投資のための基礎知識
高橋 正樹 著
定価 1,575円
判型:四六判/並製
ページ数:192ページ
初版年月日:2005年08月23日
ISBN:4-7572-1141-4
 
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