特集
「成功するインド株」
著者 高橋正樹氏 特別インタビュー
 今週はライブドアショック、システムの処理能力の限界で全銘柄の売買停止など東京証券取引所に衝撃が走った激動の1週間でした。プチ・バブルともいわれる空気に流されず、投資姿勢により一層の冷静さと本連載で高橋さんがおっしゃていたように、「株価を形成する要因、その理由を探ることに手間暇を掛けること」が大切なような気がします。

 人は暗闇を目の当りにすると、良いことよりも悪いことを考えてしまいます。本当に悪いのは、悪い材料や情報そのものではなく、「わからない」ということではないでしょうか。なにか悪いと思われる材料や情報があれば、心静かにご自分に問い掛けてみてください。その情報を充分に理解しているか...と。そして、それに沿うように株価は下がっているかと...。

 さて、新年2回目の『成功するインド株』著者インタビューは3週連続で、「超大国の成長市場」のテクニカル分析について、高橋さんにレクチャーしていただきます。デイトレードがもてはやされる今日、本連載では安易に投機に走らず、投資の本質について、冷静に考えてみたいと思います。それでは今週もじっくり高橋さんの解説をお読み下さい。
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第19回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その3−

前回は、市場や銘柄の投資価値の支持率とも言うべき、テクニカル指標について教えていただきました。
高橋 ええ、そうでしたね。
そのテクニカル指標には、株価のトレンド、つまり方向性を捉えるのに便利なものと、株価の振幅(モメンタム)を捉えるのに便利な指標があるんでしたよね。
高橋 はい、その通りです。今日もバックナンバーを読んで復習してきたんですか?
ご明察通りです。私だって一応は学習して、それなりに理解はしつつあるつもりなんですけど…。
高橋 それはいいことですよ。何だか元気がないように見えますが、買った株が値下がりでもしましたか?
えっ、ナゼわかるんですか。高橋さん、鋭すぎる(驚)。実はここ数日というもの、値下がりするいっぽうで、売ろうにも値段がつかなくて困っているんです。
高橋 それは大変ですね。ちなみに、どんな株を買ったんです?
いや〜、それはちょっと…。株価操縦とか風説の流布とかになるとマズいので言わないことにしておきます。
高橋 別にアナタがココでその銘柄名を公表しても、そういうことにはあたらないとは思いますけど…。要するに株を買ったけど損をしているってことでしょう?
その通りですね。本当にもう、がっかり、お先真っ暗って感じです。
高橋 なるほど。下落相場、持ち株が値下がりした時の心構えをしっかりと身につける必要がありますね。
はい、わかりました。至らぬ私ですが、きちんと勉強して、儲けられる投資家になりたいと思っているんですよ。
高橋 それはいい心掛けですね。しっかり勉強してください。
はい。鋭意努力したいと思います。
高橋 ぜひ、そうしてください。
さてさて、冒頭から話がそれてしまいましたが、テクニカル指標には、トレンド系のテクニカル指標とモメンタム系のテクニカル指標があるんでしたね。
高橋 ええ、そうです。前にもお話したかと思いますが、株価のトレンドを捉えるテクニカル指標では、上昇トレンドのはじめと終わりを早い段階で見極めるのは至難の業です。いっぽう、モメンタムを捉える指標だと、売買のタイミングはつかみやすいものの、株価が勢いづく場面、つまり天井圏と底値圏で売買の判断がつきにくいという弱点があります。
それぞれ長所と短所があるということですね。
高橋 そうなんですよ。だから、トレンド系の指標とモメンタム系の指標を併用することで、それぞれの強みと弱みを補うようにするのがテクニカル指標を使う際のコツだと言えます。
トレンド系のテクニカル指標の代表選手は、移動平均線でしたね。モメンタム系の指標の代表選手は、どんなものなのですか?
高橋 モメンタム系の指標にもいろいろなものがあるんですが、初心者の方でもわかりやすいのは、RSIじゃないかと私は思っています。
ああ、『社会的責任投資』ってヤツですね。
高橋 それは『SRI』だっちゅーのっ! って、どうしてそういう難しい言葉を知っているんですか?
もちろん、マネー誌に載っていたからですよ。SRIって、社会に貢献する企業に投資をするという考え方ですよね。いい話だなあと思って…。
高橋 まあ、それはそうですね。でも、今回お話するのは、SRIじゃなくてRSIです。
すいません。ところで、そのRSIというのは、どういうものですか?
高橋 株価の値動きから、その銘柄が買われ過ぎなのか、それとも売られ過ぎなのかを判断するテクニカル指標のひとつです。「これだ!」と思った銘柄があった場合に、すぐに投資するべきか、それとも少し待つほうがいいのかを判断するのに参考になる指標です。
ということは、保有している株をすぐに売るべきか、それとも少し待つほうがいいのかを判断する時にも使えるんですか?
高橋 ええ、そうです。保有銘柄を見直し入れ替える場合にも有効な情報が得られます。
へぇー、便利な指標ですね。
高橋 ちなみに、RSIというのはRelative Strength Indexの略なんです。一定期間の上げ幅の合計を同じ期間の上げ幅の合計と下げ幅の合計を足した数字で割り算して出し、100を掛けてパーセント表示します。
………。あの〜、難しすぎてよくわからないんですけど。
高橋 えっ、難しすぎますか。う〜ん、困ったなあ。これでもだいぶ説明を省いたつもりなのですが…。
ぶっちゃけ、結論だけ言っていただけると助かるんですよね。
高橋 う〜ん、そんな安直なことでいいんでしょうか?
ノープロブレム。モーマンタイ。マイペンライ。全然、OKです。
高橋 はぁ(ため息)、しかたないですね。じゃあ、結論から言いましょう。RSIが50%を中心として、上昇局面で上昇幅の割合が大きいほど100%に近づいていき、下落局面で下落幅の割合が大きいほど0%に近づきます。
ああ、そういうことなんですね。見る時のポイントなんていうものもあったりするんですか?
高橋 ええ、もちろん。一般的にはRSIが70%以上の場合は「買われ過ぎ」と判断し、30%以下の場合は「売られ過ぎ」と判断します。それと、アジア株などのエマージングマーケットの場合は、RSIを測定する期間として14日が用いられるケースが多いようです。
ということは、14日以外の場合もあるんですね?
高橋 はい。日本株の株価分析ツールなどでは、RSI9日を使っているケースもあるようです。それぞれの市場の特性にあった指標を使うのがいいと私は思いますよ。
わかりました。インド株や中国株の場合は、14日でいいんですか?
高橋 私の経験上、そう思います。
なるほど、だいぶわかってきました。先ほどのご説明から推察するに、RSIが70%以上だと買われすぎということは、その場面では、株は買わずに売ったほうがいいということですよね?
高橋 おっ、なかなか冴えてるじゃないですか。その通りですよ。
となると、株を買うならRSIが30%以下の時にしたほうがいいんですね? それで70%を越えたら売ると。
高橋 そういうことになりますね。
なんてわかりやすい指標なんでしょう! 感激モノですね。
H株指数とセンセックス指数のRSI高橋 いや〜、そう言っていただけると嬉しいですね。じゃ、話を先に進めますよ。H株指数のチャートを見てください。
おおっ、買うタイミングと売るタイミングがたくさんあるじゃないですか!
高橋 ええ、それもそうなんですけど、どちらかと言えばRSIの動きと株価の動きとを比べて見て欲しかったんですが…。
失礼しました。つい取り乱してしまいまして。
高橋 損をした直後ですから、アツくなるのもわかりますが、冷静にインタビューしてくださいよ。
はい、わかりました。それにしても、このチャートを見ると株価の動きとRSIの売買のタイミングとがみごとに一致していますね。(独り言)RSI、マジ、使えるぜ。
上司(新年初登場) こらっ、冷静になりなさい。感情に流されてはいかんよ。
あ、そうでした、すみません(汗)。今度は、センセックス指数を見てみましょう。
高橋 それ、私のセリフなんですけど…。まあ、いいか。一緒にみてみましょう。
こ、これだと、売りのシグナルばっかりで、全然買えないじゃないですか!
高橋 そうでしょう? ここがミソなんですよね。
「どうすりゃいいのよ、オレ…」って、ついつい、オダギリジョーになってしまいました。この場合は、どうすればいいんですか?
高橋 ここで先ほど説明した、トレンド系の指標とRSIとの組み合わせや、RSIからトレンドを把握する私なりのコツというか分析方法が登場するんです。
それを早く教えてください。
高橋 ええ、じゃ早速、と言いたいところですが、また来週にしましょう。次回までによく復習しておいてください。
えっ、もう終わりなんですか...そ、そんな、殺生なぁ…。もうちょっと続けましょうよ。高橋さぁ〜ん。あ〜あ、相変わらず動きが早いなぁ。


>>次週へ続く


「成功するインド株著者 高橋正樹 氏 特別インタビュー」 記事一覧
  第1回 インド株を買うことはできるのですか ?
  第2回 インド株って何 ?
  第3回 気になるインドとパキスタンの関係はどうですか ?
  第4回 超大国成長市場、インドと中国‐‐‐投資先としての魅力を教えて下さい。
  第5回 「カースト」がインドの経済発展を阻害しませんか ?
  第6回 インドの通貨制度について教えて下さい。
  第7回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その1−
  第8回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その2−
  第9回 インドの銀行株について教えて下さい。
  第10回 インド株ADR(米国預託証券)の投資のコツを教えて下さい。
  第11回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その1−
  第12回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その2−
  第13回 金融派生商品(デリバティブ)の使われ方
  第14回 『超大国の成長市場』の株価判断
  第15回 「イメージ・トライアングル」の使い方
  第16回 「銘柄の投資価値」と「市場の期待」をイメージする
  第17回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その1−
  第18回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その2−
第19回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その3−
  第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−
著者近影 著者PROFILE
高橋正樹 たかはし・まさき
現職は「岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジスト」。
元:アイザワ証券投資リサーチセンター・アジア担当ストラテジスト(本書執筆時)。
1963年生まれ。
日系投信会社、米系投資顧問会社を経て、2005年10月より現職。
ファンドマネージャー時代の全米運用パフォーマンスランキングは、2002〜2003年の2年間でアジア株部門が100社中35位、インド株部門24位(2003年のみでは12位)。この成績で注目を集め、日本では数少ないインド株投資経験者としても知られる。インド証券取引所の招きで精力的にインドの企業訪問をするなど、インドの最新情報にもくわしい。
国際公認投資アナリスト
日本証券アナリスト協会検定会員、検定テクニカルアナリスト


書影
書籍DATA
The Secret Of Success For The Indian Equity Investment
成功するインド株
出遅れない・失敗しない投資のための基礎知識
高橋 正樹 著
定価 1,575円
判型:四六判/並製
ページ数:192ページ
初版年月日:2005年08月23日
ISBN:4-7572-1141-4
 
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