特集
「成功するインド株」
著者 高橋正樹氏 特別インタビュー
 新年明けましておめでとうございます。昨年来の大寒波の影響で、大雪の被害が大きい地域の皆様には心よりお見舞い申し上げます。これから本格的な降雪の時期を迎えますが、くれぐれも事故やケガにはお気を付けください。一日も早い回復を編集部一同お祈り申し上げます。

 2006年第1回目のWebマガジン『成功するインド株』著者インタビューをお届けします。昨年末のインド取材でますます鋭さに磨きが掛かった高橋さんの解説、今年もどうぞご期待下さい。
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第18回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その2−

高橋さん、明けましておめでとうございます。昨年はこの連載スタートでいろいろお世話になりました。今年もよろしくお願いします。
高橋 いえいえ、こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
さて、新年、第一回目のインタビューですが、高橋さんが12月に行かれたインドの最新事情からでしたよね?
高橋 象が車と並んで自動車道路を歩いているかどうかって話でしたよね。
いや、まぁ、それもうかがいたいところですが、どちらかと言うと、一年ぶりのインド訪問で以前とどう変わったのかをおうかがいしたいんですけど…。
高橋 とにかく、自動車道路を歩く象は見掛けなかったですね。
なぁんだ、それは残念。ということは象の写真もないんですね。では、インドの外資導入策がどうなっているかとか、人々の生活に変化があったのかというお話をお願いします。
高橋 たしかにいろいろ感じるところはありました。
ムンバイ証券取引所やインドの老舗財閥のタタ・グループ、新興財閥のリライアンス・グループも訪問されたんですよね?
高橋 ええ、そうなんですけど…。
何か言いづらいことでもあるんですか?
高橋 そういうわけじゃないんですけど、私のセミナーで話したりもするので、そのあたりとの兼ね合いを考えながらお話したいと思っているんです。なので、今日の所はご勘弁いただきたいんですが。
なるほど、そうですよね。詳しくは岡三證券アジア情報館のセミナーで...ってことですね。それでは読者の皆さん、岡三證券ホームページでどうぞ。
高橋 何だか宣伝みたいで、すいません。
いえいえ、さて、そろそろ本題に入りましょう。前回は「超大国の成長市場」のテクニカル分析について教えていただきました。
高橋 ええ、そうでしたね。
「テクニカル分析」なんて言われるとすごく難しいことみたいですが、テクニカル指標をその市場や銘柄の投資価値の支持率と捉えると、活き活きとしたものに感じられます。
高橋 そう思っていただけるとうれしいですね。ここでちょっとだけ復習しておくと、テクニカル指標には、株価のトレンド、つまり方向性を捉えるのに便利なものと、株価の振幅(モメンタム)を捉えるのに便利な指標があります。
トレンド系のテクニカル指標とモメンタム系のテクニカル指標でしたね。
高橋 よく覚えてましたね。なかなか感心だなぁ。
移動平均は、株価のトレンド(方向性)を捉えるテクニカル指標の代表選手なんですよね?
高橋 その通りです。前回は、その移動平均について、基本的なことを説明して終わりましたね。
そうです。短期の移動平均線と長期の移動平均線を使って、その位置関係を見て売買の判断をするというお話でした。
センセックス指数とH株指数の移動平均高橋 じゃあ、今日は、インドのセンセックス指数と中国のH株指数の移動平均を見て、それぞれの市場のキャラクターの違いを分析していきましょう。
はい、お願いします。
高橋 移動平均を見る時には、いくつかポイントがあります。前回も説明しましたが、移動平均線は過去の株価の平均値を結んだもので、相場のトレンド(方向)を見る指標として使われます。なかでも、短期と長期の2本の移動平均線が交差すると有力な売買のシグナルだとされています。
このチャートで言うと、30日移動平均線と100日移動平均線が交差したところのことですね。
高橋 そうです。このうち、短期の移動平均線、この場合は30日ですが、これが長期の移動平均線、ここでいう100日移動平均線を抜いて、上昇することを「ゴールデンクロス」と言い、買いのシグナルだと言われます。
これから株価が上がるサインだというわけですね。
高橋 ええ、そう考えていただいていいと思います。逆に、短期の移動平均線が長期の移動平均線を抜いて下降することを「デッドクロス」と言い、こちらは売りのシグナルだとわれています。
へぇ、これはおもしろいですね。勉強になります。「ゴールデンクロス」とか「デッドクロス」とかネーミングもイカしてますよね。
高橋 そのほか、移動平均線と株価との位置関係で売買のシグナルを読み取る方法もあります。
是非教えて下さい。
高橋 たとえば、移動平均線が下降(左肩下がりの状態)から横ばい、そして上昇(右肩上がり)に変わり、かつ株価が移動平均線を下から上に突き抜けると「買いのシグナル」だと言われています。
要するに、この場合は、移動平均線が下向きもしくは横ばいの状態で、かつ株価を表す線が移動平均線より下に位置しているところから始まるわけですね。それで、移動平均線が上向きになり、しかも株価が移動平均線を下から上に抜けたところが買いのシグナルですね。
高橋 ええ、そうです。移動平均線は右肩上がりなのに、株価が移動平均線の位置より下にある場合も、株価の下落は一時的なものでいずれ上昇すると見られるため、買いのシグナルだと言われます。
なるほど。勉強になりますね。でもそれだけで判断して良いものでしょうか?
高橋 ほかにもいくつかあるんですが、とりあえずはこんな感じだと考えてください。
売りのシグナルは、どうなりますか?
高橋 簡単に言ってしまうと、今、説明したものの逆バージョンが売りのシグナルです。
株価が移動平均線より上にあって、その移動平均線が上昇から下降に変わって、株価が移動平均線を下に抜いていくってことですか?
高橋 その通りです。移動平均線が左肩下がりで、株価が移動平均線の位置より上にある場合も、株価の上昇は一時的なものと考えられるので、売りのシグナルです。
なるほど、なるほど。よくわかりました。これはわかりやすいですね。
高橋 もっと簡単に言えば、ぱっと見で長期の移動平均より短期の移動平均が上にあり、その上に株価があれば上昇トレンドと判断できます。
それを押さえたうえで、H株指数とセンセックス指数を見てみると、H株指数には売り買いのそれぞれのシグナルはありますが、今後、本当に上がっていくのかどうか、ちょっとわかりにくい感じがしますね。
高橋 そうですね。ただ、H株指数の場合、中国最大手の石油会社であるペトロチャイナという銘柄が構成比率に占める割合がすごく大きくて、H株指数の2割を占めています。
となると、ペトロチャイナの値動きが、H株指数に結構影響を与えるんですね。
高橋 簡単にいうとそんな感じです。H株指数の組み入れ銘柄全部がH株指数、言ってみればペトロチャイナと同じような動きをしているわけではないんです。
要するに、H株指数を見て「今が買いだ」と思っても、必ずしも個々の銘柄が買いだとは限らないんですね。
高橋 ええ、そういうことです。いっぽう、センセックス指数は、構成比率が最も大きいインド石油天然ガス公社でも5%もありません。ご存じのとおり、インド株は海外の個人投資家に対して完全には開放されておらず、外国人が買う場合はファンドで投資をするケースが多いのです。
ファンドで投資をするのと個別で投資をするのとでは、株価の動きに違いがあるんですか?
高橋 ええ。わかりやすい表現をすると、ファンドで投資をする場合は、ファンドマネージャーが「買いだ」と思う銘柄をまとめてガバっと買うわけです。業界用語では、バスケットで買うなんて言うんですけどね。
わかりました。まとめて買うから、インド株の個別銘柄の値動きは、H株の個別銘柄ほどには大きな違いが現れにくいんですね。
高橋 まあ、そういっていいでしょう。「買い」と判断されると株価がいっせいに上がって、「売り」と判断されるといっせいに下がるイメージですね。
そうなんですか。おもしろいですね。
高橋 それと、前にも言ったかと思いますが、中国は政府の出す政策で株価が動くマーケットなんです。だから、テクニカル指標で「買い」と出ていても、新たな政策が打ち出されると株価の動きががらっと変わる可能性もあります。
テクニカル指標があまり参考にならない場合もあるんですね。
高橋 はい、そうです。そういう意味では、インドのほうがテクニカル分析がしやすいと言えるかもしれません。
ところで、テクニカル指標って、どのくらい参考にできるものなんですか?
高橋 テクニカル分析の専門家のなかには、「テクニカル分析は株価の将来を予言する」と思っている方もいるようです。
本当にそうなんですか?
高橋 私は必ずしもそうだとは考えていません。テクニカル指標をその市場や銘柄の投資価値の支持率だと考えています。と言うのは、投資家は投資価値、つまりその企業の財務状態を分析して株を売買するからです。
投資価値に大きな変化が起きる場合は、株価にも何らかのサインが出ると?
高橋 そういうことです。だから、その銘柄の将来を考えるためには、テクニカル分析だけでなく、イメージ・トライアングルがどうしても必要になってくるんです。
なるほど。そう、つながってくるんですね。
高橋 そうなんです。でも実はテクニカル分析もこれで終わりじゃありません。次回以降は、モメンタム系のテクニカル指標についてお話ししたいと思います。
はい。どうぞよろしくお願い致します。では今週はこの辺で...ところで私の上司、新年早々インフルエンザに罹って、高熱出して、ウンウンうなっているんです。外出禁止だし、かわいそうなので、何かインドのお土産でもあれば...。アレッ、高橋さん、高橋さぁ〜ん。あたしもお土産期待していたんですけどぉ〜。あ〜あ、行っちゃった。[編集部注:デキル男は今年も逃げ足が速い。そして時間を無駄にしない。でもお土産は私たちも欲しい(笑)]


>>次週へ続く


「成功するインド株著者 高橋正樹 氏 特別インタビュー」 記事一覧
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  第2回 インド株って何 ?
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  第7回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その1−
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  第11回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その1−
  第12回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その2−
  第13回 金融派生商品(デリバティブ)の使われ方
  第14回 『超大国の成長市場』の株価判断
  第15回 「イメージ・トライアングル」の使い方
  第16回 「銘柄の投資価値」と「市場の期待」をイメージする
  第17回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その1−
第18回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その2−
  第19回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その3−
  第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−
著者近影 著者PROFILE
高橋正樹 たかはし・まさき
現職は「岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジスト」。
元:アイザワ証券投資リサーチセンター・アジア担当ストラテジスト(本書執筆時)。
1963年生まれ。
日系投信会社、米系投資顧問会社を経て、2005年10月より現職。
ファンドマネージャー時代の全米運用パフォーマンスランキングは、2002〜2003年の2年間でアジア株部門が100社中35位、インド株部門24位(2003年のみでは12位)。この成績で注目を集め、日本では数少ないインド株投資経験者としても知られる。インド証券取引所の招きで精力的にインドの企業訪問をするなど、インドの最新情報にもくわしい。
国際公認投資アナリスト
日本証券アナリスト協会検定会員、検定テクニカルアナリスト


書影
書籍DATA
The Secret Of Success For The Indian Equity Investment
成功するインド株
出遅れない・失敗しない投資のための基礎知識
高橋 正樹 著
定価 1,575円
判型:四六判/並製
ページ数:192ページ
初版年月日:2005年08月23日
ISBN:4-7572-1141-4
 
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