特集
「成功するインド株」
著者 高橋正樹氏 特別インタビュー
【アクセス好調!御礼申し上げます】大反響、好評連載企画も今回で6回目。『成功するインド株』の著者高橋正樹氏も10月から岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジストにその活躍の場を移されます。さて、今回は世界経済におけるその存在感を日増しに高めるインド経済。その通貨制度について教えていただきました。
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第6回 インドの通貨制度について教えて下さい。

外国株に投資をする時は、日本円をその国の通貨に換えてから株を買うのですよね。もしインド株に直接投資ができるようになった場合も同じですか?
高橋 もちろんそうです。日本円をインドの通貨であるインディアンルピーに両替してからインド株を買うことになります。
まず基礎的なことをうかがいたいのですが、たとえば米ドル建ての外貨預金をする場合には、米ドルに対して日本円が高い時に始めたほうがいいと言われますよね。インディアンルピーの場合も、インディアンルピーに対して、日本円が高い時に両替するほうが望ましいのですか?
高橋 おっしゃる通りです。ただしインディアンルピーは、日本円や米ドル、ユーロなどのように24時間世界のどこかで取引されていて、為替レートが自由に変動しているわけではありません。
えっ、日本円って、24時間世界のどこかで取引されていたんですか? それは知りませんでした…。
高橋 ウィークディであればですけどね。夜中、テレビのニュースなどで「現在、ニューヨークでは1ドル=○○円で取引されています」と報道しているのを聞いたことはありませんか?
あります、あります。なるほど。日本は夜中だから取引されていないけれど、ニューヨークでは取引されているから「現在、ニューヨークでは」と言うんですね。今、初めて理解しました。
高橋 それはよかった(爆笑)。じゃ、話をインドに戻してもいいですか?
はい、お願いします。
高橋 インド政府はインドの通貨制度を日本やアメリカなどと同じく、自由に変動する変動相場制だとしています。ですが、実際には米ドルの動きを睨みながら、インディアンルピーの為替レートを管理しているんです。しかも、今年の7月まで中国が行っていたような自国の通貨の人民元を米ドルに対して固定していた制度とは異なり、インディアンルピーが米ドルに対して一定のゆるやかな速度で下落するように管理をしているのです。
うーん、ややこしいですね。要するに、表向きは「自由に変動する」としてはいるものの、実際には米ドルに沿うように管理され、しかも米ドルに対して一定のゆるやかなスピードで安くなるように管理してきたんですね。
高橋 そういうことです。管理変動相場制とでも言いましょうか。
でも、いったいなぜ、米ドルに対して安くなるように管理してきたんですか?
高橋 詳しいことは『成功するインド株』をお読みいただければと思いますが、インドは他のアジア諸国より早く、1990年代初頭に通貨危機に陥りました。その際にインドで自由化政策を推進したIMFが、一定の輸出競争力をつけるまでは為替レートを一定のスピードでゆるやかに下落させることを認めたのです。
米ドルに対してインディアンルピーが安くなれば、インドから輸出される製品のドル建ての値段も安くなるからですね。
高橋 その通りです。長い間ゆるやかなスピードで下落してきた結果、インドの企業は為替面ではじゅうぶんな輸出競争力をつけたと言えます。
でも、左側のグラフを見るとここへ来て、インディアンルピーが少し高くなってきていますが...?
高橋 はい。外国の機関投資家がインド株に注目しはじめたためにインディアンルピーが買われるようになったからです。とは言っても、インドの中央銀行が管理しているので急激に高くなったりはしませんから、輸出競争力がガクンと落ちるようなこともないはずです。ただし、最初にも申し上げたように為替レートが動く通貨ですから、インド株に投資できるようになった時には、ルピー安の時に投資したほうがいいでしょう。
インディアンルピーが安い時ですね。
高橋 はい。もっと具体的に言えば日本円が米ドルに対して高くて、かつインディアンルピーがドルに対して安い時に投資をするのが効率がいいと言えます。
今後、インドが経済的に成長していったら、インディアンルピーもどんどん高くなっていくのですね?
高橋 そうなると思います。
ということは、インディアンルピーが安い時にルピーを買っておいて、高くなった時に売れば(=円に戻せば)為替差益が得られますね?
高橋 はい。インドの個別株を買うことができるようになった時に、有力な成長企業の株を買えば、その企業が成長して株価が上がって、キャピタルゲインが得られるだけでなく、為替差益も得られると言えるでしょう。
1粒で2度オイシイのですね! でも、私たち日本人の個人投資家がインド株を買えるようになる前に、インディアンルピーが高くなり過ぎたりはしませんか?
高橋 そんなことはありませんよ。インディアンルピーが急激に高くなって、輸出競争力が落ちては困りますから、急激なルピー高にならないようインドの中央銀行が管理します。それにインディアンルピーが高くなっているとは言っても、日本円で100円も出したらインドのローカルレストランでたらふく食べてもおカネが余るくらいなんですから。
高橋さんがたらふく食べてもおカネが余るくらいなら、インディアンルピーはまだまだ安いってことですね(笑)。
高橋 それ、どういうことですか?
いえ…、インドが経済成長する過程で有力なインドの成長企業に投資をすればキャピタルゲインも為替差益も得られるなんて、実に投資妙味のある話だなあと(汗)…。


>>次週へ続く

「成功するインド株著者 高橋正樹 氏 特別インタビュー」 記事一覧
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  第4回 超大国成長市場、インドと中国‐‐‐投資先としての魅力を教えて下さい。
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  第13回 金融派生商品(デリバティブ)の使われ方
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  第19回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その3−
  第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−
著者近影 著者PROFILE
高橋正樹 たかはし・まさき
現職は「岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジスト」。
元:アイザワ証券投資リサーチセンター・アジア担当ストラテジスト(本書執筆時)。
1963年生まれ。
日系投信会社、米系投資顧問会社を経て、2005年10月より現職。
ファンドマネージャー時代の全米運用パフォーマンスランキングは、2002〜2003年の2年間でアジア株部門が100社中35位、インド株部門24位(2003年のみでは12位)。この成績で注目を集め、日本では数少ないインド株投資経験者としても知られる。インド証券取引所の招きで精力的にインドの企業訪問をするなど、インドの最新情報にもくわしい。
国際公認投資アナリスト
日本証券アナリスト協会検定会員、検定テクニカルアナリスト


書影
書籍DATA
The Secret Of Success For The Indian Equity Investment
成功するインド株
出遅れない・失敗しない投資のための基礎知識
高橋 正樹 著
定価 1,575円
判型:四六判/並製
ページ数:192ページ
初版年月日:2005年08月23日
ISBN:4-7572-1141-4
 
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