インドと言うとパキスタンとの対立が気になるところですが……。
高橋 インド株が注目されるようになった背景には、インドとパキスタンの歴史的な関係改善が影響しているんです。
それは、どういうことですか?
高橋 2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが起きました。その後、アメリカはアフガニスタン攻撃に出ました。日本ではあまり報道されていませんが、今、アフガニスタンはGDP成長率80%という驚異的な回復を遂げているんです。それを支えているのがアメリカの資本です。
えっ、そうなんですか。
高橋 アメリカがアフガニスタンを攻撃するためには、アフガニスタンの隣国パキスタンを軍事基地にせざるをえませんでした。パキスタンはイスラム教国です。そのパキスタンでイスラム革命などが起きたら元も子もありません。
おまけに、イスラム教国には、反アメリカ的な意識が根強くありますよね。
高橋 ええ。パキスタンをアメリカの味方につけるのは並大抵のことではなかったでしょう。イスラム教国であるパキスタンの情勢を安定させ、アメリカの味方につけるには、隣国で、領土問題を抱えているインドとの関係改善を図る必要がありました。インドはご存じのとおりヒンドゥー教徒が多い国です。しかも政策への批判をかわすために、政府自らがヒンドゥーナショナリズムを煽る傾向すらありました。インド国内でヒンドゥーナショナリズムが高まるとイスラム教国のパキスタンとの衝突につながります。カシミール問題がその典型例だと言えるでしょう。
危機感を煽って国を安定させるんですね。
高橋 それをさせないためにアメリカは、インドの経済発展を支援し、インドでヒンドゥー・ナショナリズムが昂揚しないようにする必要がありました。だからアメリカは、インドとパキスタンとの関係改善まで後押ししてきたわけです。インドとしても、世界的なITバブルが崩壊したことで次の経済成長のための策を模索せざるをえない状況でしたから、渡りに船だったと言えるでしょう。
インドの経済成長は、アメリカのアフガニスタン攻撃の賜物だったと?
高橋 そうとも言えます。
インドとパキスタンの雪解けムードというのは、一般の市民レベルにまで浸透しているものなんですか。政府やマスコミだけが騒ぎ立てているんじゃないでしょうか?
高橋 確かに、昨年、私がインドを訪問した段階では、まだ一般の市民レベルでは、それほど浸透している感じではありませんでした。いろいろな人にヒアリングしてみましたが、「アメリカの後押しで政府どうしが仲よくしているだけで、われわれにはピンとこない」という人が多数派でした。ところが、今春インドを訪問したときには「インドとパキスタンの関係改善は本物だ」と一般の人々までがその気になっていました。テレビを見ても、毎日のようにインドとパキスタンとの関係改善がいかにうまく進んでいるかアピールするような報道がありますし、関係改善のプラスにつながるイベントも盛んに行なわれています。パキスタンのムシャラフ大統領がインドの首都デリーで開かれたクリケットの試合を観戦したりもしています。
そうなんですね。
高橋 目先はインドとパキスタンとの間にも小さな問題はあるかもしれません。ですが、両国の関係改善は本物ですから、パキスタン関係がインド株に投資するときのマイナス材料になる可能性は少ないでしょう。両国の関係に懸念材料が出た場合、株価は下がるかもしれません。ですが、逆バリ(株価が下がった時に株を買う)をする投資家の方であれば、そこを買い場と考えることもできるかもしれませんよ。
それは良いことをうかがいました(笑)。
>>次週へ続く
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