特集
「成功するインド株」
著者 高橋正樹氏 特別インタビュー
敏腕ファンドマネジャーの注目のインド株攻略法を初公開した『成功するインド株』。その著者高橋正樹氏に直接お話を伺う連載企画の3回目をお送りします。インドといえば、どうしても気になるのがパキスタンとの関係。三度にわたり繰り返された俗にいう印パ戦争のことを記憶されている方も少なくないでしょう。かつてカシミール地方の領有をめぐってインドとパキスタンの間で争われ、全面戦争にまで発展した両国の関係はどうなのか?現在も規模は小さいものの繰り返される武力衝突。核兵器を所有するインド・パキスタン両国の緊張関係は投資家ならずとも心配なところです。そんな懸念をお持ちの方にも、今回のお話は興味深くお読みいただけると思います。
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著者近影 著者PROFILE
高橋正樹 たかはし・まさき
現職は「岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジスト」。
元:アイザワ証券投資リサーチセンター・アジア担当ストラテジスト(本書執筆時)。
1963年生まれ。
日系投信会社、米系投資顧問会社を経て、2005年10月より現職。
ファンドマネージャー時代の全米運用パフォーマンスランキングは、2002〜2003年の2年間でアジア株部門が100社中35位、インド株部門24位(2003年のみでは12位)。この成績で注目を集め、日本では数少ないインド株投資経験者としても知られる。インド証券取引所の招きで精力的にインドの企業訪問をするなど、インドの最新情報にもくわしい。
国際公認投資アナリスト
日本証券アナリスト協会検定会員、検定テクニカルアナリスト


書影
書籍DATA
The Secret Of Success For The Indian Equity Investment
成功するインド株
出遅れない・失敗しない投資のための基礎知識
高橋 正樹 著
定価 1,575円
判型:四六判/並製
ページ数:192ページ
初版年月日:2005年08月23日
ISBN:4-7572-1141-4
 
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第3回 気になるインドとパキスタンの関係はどうですか ?

インドと言うとパキスタンとの対立が気になるところですが……。
高橋 インド株が注目されるようになった背景には、インドとパキスタンの歴史的な関係改善が影響しているんです。
それは、どういうことですか?
高橋 2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが起きました。その後、アメリカはアフガニスタン攻撃に出ました。日本ではあまり報道されていませんが、今、アフガニスタンはGDP成長率80%という驚異的な回復を遂げているんです。それを支えているのがアメリカの資本です。
えっ、そうなんですか。
高橋 アメリカがアフガニスタンを攻撃するためには、アフガニスタンの隣国パキスタンを軍事基地にせざるをえませんでした。パキスタンはイスラム教国です。そのパキスタンでイスラム革命などが起きたら元も子もありません。
おまけに、イスラム教国には、反アメリカ的な意識が根強くありますよね。
高橋 ええ。パキスタンをアメリカの味方につけるのは並大抵のことではなかったでしょう。イスラム教国であるパキスタンの情勢を安定させ、アメリカの味方につけるには、隣国で、領土問題を抱えているインドとの関係改善を図る必要がありました。インドはご存じのとおりヒンドゥー教徒が多い国です。しかも政策への批判をかわすために、政府自らがヒンドゥーナショナリズムを煽る傾向すらありました。インド国内でヒンドゥーナショナリズムが高まるとイスラム教国のパキスタンとの衝突につながります。カシミール問題がその典型例だと言えるでしょう。
危機感を煽って国を安定させるんですね。
高橋 それをさせないためにアメリカは、インドの経済発展を支援し、インドでヒンドゥー・ナショナリズムが昂揚しないようにする必要がありました。だからアメリカは、インドとパキスタンとの関係改善まで後押ししてきたわけです。インドとしても、世界的なITバブルが崩壊したことで次の経済成長のための策を模索せざるをえない状況でしたから、渡りに船だったと言えるでしょう。
インドの経済成長は、アメリカのアフガニスタン攻撃の賜物だったと?
高橋 そうとも言えます。
インドとパキスタンの雪解けムードというのは、一般の市民レベルにまで浸透しているものなんですか。政府やマスコミだけが騒ぎ立てているんじゃないでしょうか?
高橋 確かに、昨年、私がインドを訪問した段階では、まだ一般の市民レベルでは、それほど浸透している感じではありませんでした。いろいろな人にヒアリングしてみましたが、「アメリカの後押しで政府どうしが仲よくしているだけで、われわれにはピンとこない」という人が多数派でした。ところが、今春インドを訪問したときには「インドとパキスタンの関係改善は本物だ」と一般の人々までがその気になっていました。テレビを見ても、毎日のようにインドとパキスタンとの関係改善がいかにうまく進んでいるかアピールするような報道がありますし、関係改善のプラスにつながるイベントも盛んに行なわれています。パキスタンのムシャラフ大統領がインドの首都デリーで開かれたクリケットの試合を観戦したりもしています。
そうなんですね。
高橋 目先はインドとパキスタンとの間にも小さな問題はあるかもしれません。ですが、両国の関係改善は本物ですから、パキスタン関係がインド株に投資するときのマイナス材料になる可能性は少ないでしょう。両国の関係に懸念材料が出た場合、株価は下がるかもしれません。ですが、逆バリ(株価が下がった時に株を買う)をする投資家の方であれば、そこを買い場と考えることもできるかもしれませんよ。
それは良いことをうかがいました(笑)。


>>次週へ続く

「成功するインド株著者 高橋正樹 氏 特別インタビュー」 記事一覧
  第1回 インド株を買うことはできるのですか ?
  第2回 インド株って何 ?
第3回 気になるインドとパキスタンの関係はどうですか ?
  第4回 超大国成長市場、インドと中国‐‐‐投資先としての魅力を教えて下さい。
  第5回 「カースト」がインドの経済発展を阻害しませんか ?
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  第7回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その1−
  第8回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その2−
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  第10回 インド株ADR(米国預託証券)の投資のコツを教えて下さい。
  第11回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その1−
  第12回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その2−
  第13回 金融派生商品(デリバティブ)の使われ方
  第14回 『超大国の成長市場』の株価判断
  第15回 「イメージ・トライアングル」の使い方
  第16回 「銘柄の投資価値」と「市場の期待」をイメージする
  第17回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その1−
  第18回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その2−
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  第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−