特集
「成功するインド株」
著者 高橋正樹氏 特別インタビュー
話題の小社新刊、敏腕ファンドマネジャーの注目のインド株攻略法を初公開した『成功するインド株』。 その著者、高橋正樹氏に世界中の投資家の視線を集めるインド株について、お話を聞く好評連載企画、今回はその第4回目。世界中の投資家から注目されているBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中で、なぜインドと中国が投資先として魅力があるのか?というお話を伺っています。
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第4回 超大国成長市場、インドと中国‐‐‐投資先としての魅力を教えて下さい。

今後、高い経済成長を遂げる国として、今、世界中の投資家からBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が注目されています。「成功するインド株」では、インドと中国は詳しく説明されていますがブラジルとロシアについてはあまり触れていません。なぜなのでしょうか? 単に高橋さんがブラジルとかロシアは、あまりお好きではないからだとか?
高橋 別にそういうわけじゃありません(笑)。投資対象としても魅力のある国だと考えています。ですが、「成功するインド株」でも触れましたが、ブラジル・ロシアとインド・中国とでは経済発展の方法に違いがあるのです。
経済発展の方法が違うんですか?
高橋 ええ。いずれも超大国成長市場ですが、ロシアとブラジルは資源開発型の国であるのに対し、インドと中国は労働力開発型の国です。前者は比較的人口が少ないため(ロシア:1億4320万人、ブラジル1億7850万人)、豊富な資源を開発して輸出すれば国を豊かにすることができます。いっぽう後者は人口が非常に多いため(インド10億6550万人、中国13億420万人)、資源を輸出するだけでは国全体を豊かにすることはできません。人口が多いということは、労働力が豊富だということですし、発展途上の段階ですから先進諸国に比べて労働者の賃金も高くありません。そこで安価な労働力を欲しがっている国の製造業を誘致して「世界の工場」になると同時に、諸外国の進んだ技術を手に入れ、国全体の底上げを図ろうとしているのです。
インドと中国のほうが投資先としてより魅力があるということですか?
高橋 私はそう考えています。繰り返しになりますが、ブラジルとロシアに魅力がないわけではありません。ブラジルとロシアは資源開発型の国ですから、資源の値段が高騰している今、株式市場は好調です。ですが、資源の値段が上がる背景には、労働開発型のインドと中国が「世界の工場」として製造業を発展させつつあることが影響しているのです。
もしかして、インドと中国がブラジルやロシアから資源をたくさん買っているんですか?
高橋 その通りです。資源開発型の超大国と労働開発型の超大国とは、切っても切れない関係にあります。
それならブラジルやロシアの株でもいいわけですよね?
高橋 はい。ただし、資源開発型の国の株価は、資源の値段に大きく影響される傾向があります。今現在は絶好調ですが、将来、資源価格が下がるようなことがあった場合には、株価も下がる可能性があるのです。これに対しインドや中国は、国そのものを開発するところに株価上昇の原動力があるので、国が開発されればされるほど株価が上がることになります。人口が多いですから、国全体が底上げされれば巨大な消費市場としても期待できます。より長期的なスタンスで投資をするのであれば、インドと中国のほうが適合していると言えるでしょう。
先ほど「世界の工場」という言葉が出ましたが、これは中国を語る際の“形容詞”というイメージがありますが…。
高橋 おっしゃる通りです。1990年代以降、中国が採用した経済発展モデルを今インドが本気で導入しようとしているのです。
インドは1990年代初頭の中国と同じような状態ということですか?
高橋 そう言ってもいいでしょう。「成功するインド株」では、アジアにある2つの超大国成長市場であるインドへの株式投資をぜひ中国への株投資と一緒に考え、取り組むことを提案しています。インドは中国の経済発展モデルを参考に成長しようとしているのですから、中国の経済成長モデルを理解することでインドがぐっとわかりやすくなるからです。
インドと中国を一緒に理解するんですか?
高橋 はい。本書で第2次大戦後の両国の歴史にはじまり、経済体制、産業だけでなく、株価指数の組み入れ銘柄など株式投資をするうえでの比較も行っているのはそのためです。実は、私自身、ファンドマネージャーとして2000年からインド株投資をすることになった時、同様の方法でインド株投資を理解しました。その経験から「インドと中国を一緒に理解してください」と申し上げているのです。
超大国成長市場という有力かつ魅力的な投資対象が2つ同時にわかるようになるんですね。
高橋 早く、しかも深く理解することができるようになります。もちろん、中国株は配当利回の高い銘柄が多いいっぽう、インド株はスケールメリットを享受できる典型的な成長株だという違いはあります。とはいえ、中国株とインド株を比較することで、理解がより深まり、儲けやすくなると私は考えています。


>>次週へ続く

「成功するインド株著者 高橋正樹 氏 特別インタビュー」 記事一覧
  第1回 インド株を買うことはできるのですか ?
  第2回 インド株って何 ?
  第3回 気になるインドとパキスタンの関係はどうですか ?
第4回 超大国成長市場、インドと中国‐‐‐投資先としての魅力を教えて下さい。
  第5回 「カースト」がインドの経済発展を阻害しませんか ?
  第6回 インドの通貨制度について教えて下さい。
  第7回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その1−
  第8回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その2−
  第9回 インドの銀行株について教えて下さい。
  第10回 インド株ADR(米国預託証券)の投資のコツを教えて下さい。
  第11回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その1−
  第12回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その2−
  第13回 金融派生商品(デリバティブ)の使われ方
  第14回 『超大国の成長市場』の株価判断
  第15回 「イメージ・トライアングル」の使い方
  第16回 「銘柄の投資価値」と「市場の期待」をイメージする
  第17回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その1−
  第18回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その2−
  第19回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その3−
  第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−
著者近影 著者PROFILE
高橋正樹 たかはし・まさき
現職は「岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジスト」。
元:アイザワ証券投資リサーチセンター・アジア担当ストラテジスト(本書執筆時)。
1963年生まれ。
日系投信会社、米系投資顧問会社を経て、2005年10月より現職。
ファンドマネージャー時代の全米運用パフォーマンスランキングは、2002〜2003年の2年間でアジア株部門が100社中35位、インド株部門24位(2003年のみでは12位)。この成績で注目を集め、日本では数少ないインド株投資経験者としても知られる。インド証券取引所の招きで精力的にインドの企業訪問をするなど、インドの最新情報にもくわしい。
国際公認投資アナリスト
日本証券アナリスト協会検定会員、検定テクニカルアナリスト


書影
書籍DATA
The Secret Of Success For The Indian Equity Investment
成功するインド株
出遅れない・失敗しない投資のための基礎知識
高橋 正樹 著
定価 1,575円
判型:四六判/並製
ページ数:192ページ
初版年月日:2005年08月23日
ISBN:4-7572-1141-4
 
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