特集
「成功するインド株」
著者 高橋正樹氏 特別インタビュー
 連載『成功するインド株』著者高橋正樹氏インタビューもついに20回目を迎えました。今週も高橋さんにテクニカル分析のコツを教えていただいております。

 ライブドア・ショック、システムの処理能力の問題で大きく揺れる東京証券取引所。個人投資家である私たちは安易に投機に走らず、下落相場にも動じることのないようにしたいものです。どんな時も冷静に投資対象と向き合うことが大切だと私たちは考えています。この連載が少しでも読者の皆様のお役に立てば、幸甚です。

 さて、アスペクトから今年3月出版予定の高橋正樹さんの新刊準備のため、しばらくこの連載を休載致します。それまでしばらく、バックナンバーと好評既刊『成功するインド株』を読んで、私たち編集部一同ももじっくり基礎から学び直したいと思っています。では、4週連続でお送りする「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−、RSI(Relative Strength Index)について、その活用法をお届けします。これは目から鱗が落ちます。高橋流のテクニカル分析をじっくりお読み下さい。
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第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−

先週は、モメンタム系のテクニカル指標の代表選手でもあるRSI(Relative Strength Index)について教えていただきました。
高橋 あ、そうでしたっけ。そういえば、そうですね。失礼しました。
ええ…。あの〜、前々から不思議に思っていたんですけど、高橋さんって前の週にうかがった内容をおさらいする時、毎回、「あ、そうでしたっけ」的なことをおっしゃいますよね。
高橋 えっ、そうですか? 気がつきませんでした。
もしかして、その前の週にうかがったことをお忘れになっているとか?
高橋 いや、そんなことはありませんよ。わはははは(笑)。
そうですかぁ? さて問題です。今週は何について、おうかがいするんでしょうか?
高橋 今週ですか? えーと、エリオット波動についてでしたっけ?
全然違うじゃないですか(笑)。ところで今の、それ、何ですか?
高橋 エリオット波動というのは…。
やっぱり、説明が長くなると困るので、パトリオット何とかについてうかがうのは次の機会にします。
高橋 ちなみに、パトリオットじゃなくてエリオットですよ。
やだなぁ、もう...わざとボケているんですぉ(笑)。パトリオットはミサイルの名前でしたね…。正解はRSIの高橋さんならではの使い方のコツです。
高橋 あー、そうでした、そうでした。うん、思い出しましたよ。
というわけで、今週の本題、RSI(Relative Strength Index)の応用編です。RSIは、株価の値動きから、その銘柄が買われ過ぎなのか、それとも売られ過ぎなのかを判断するテクニカル指標のひとつでしたね。
高橋 ええ、その通りです。「これ!」と思う銘柄があった場合、今すぐ投資するべきか、それとも待ったほうがいいのかを判断する際に参考になる指標です。一般的にはRSIが70%以上の場合は「買われ過ぎ」と判断し、30%以下の場合は「売られ過ぎ」と判断します。
だから、RSIが30%以下の時に株を買い、70%を越えたら、売るというテクニックが使えるわけですね。
高橋 そうです。ちゃんと覚えてましたね。
ええ、もちろんですよ。これでもちゃんと復習は欠かしていないんですから。
高橋 それはいい心掛けですね。素晴らしい(拍手)。
さて、今日のお話のポイントは、中国のH株指数のチャートを見ると、株価の動きとRSIの売買のタイミングとがみごとに一致しているけれど、インドのセンセックス指数のチャートの場合は、売りのシグナルばっかりで全然買えないってことでしたね。
H株指数とセンセックス指数のRSI高橋 あ、そうでした、そうでした。H株指数のようにRSIがちゃんと“使える”ことを「RSIがフィットする」と言ったりするんですよ。
へぇ、そうなんですか。じゃあ、センセックス指数のようなケースは「フィットしない」と言うんですか?
高橋 まあ、そう言わなくもないのですが、こういう場合は「ダマシ」とか「ダマシが出ている」とか言うんですよ。
「ダマシ」ですか?
高橋 ええ。売買のシグナルが有効に働かないということです。RSIの弱点が出たと言うとわかりやすいかもしれませんね。
弱点が出たって、どういうことですか? わかりやすく説明して頂けませんか?
高橋 はい、そうしましょう。RSIがフィットしなくなった、つまり相場のトレンドが強く変化したということなんです。
トレンドが強く変化するってどういうことですか?
高橋 トレンドというのは、株価の動く方向性のことでしたよね。
あっ、わかりました! 株価が、上昇なら上昇、下降なら下降する傾向だということですね。
高橋 お見事、正解です。トレンドが以前よりも強くなる場合、つまり株価の上げが勢いづいたり、逆に下げが勢いづいたりする場合には、ずっとRSIが50%以上で推移し続けたり、逆に50%以下で推移する状態が続いたりするのです。どうしてそうなるのかは、数学の世界のお話になってしまうので、ここでは止めておきますね。
ええ、そうしてください。金融工学や数学の難しい話をされても、ついていけませんから…。要するに、上昇トレンドが継続する場合には、RSIは高めに推移し続け、下降トレンドが続く場合には、RSIは低めに推移し続ける傾向があるってことですよね。
高橋 素晴らしい「まとめ」じゃないですか。その通りです。
センセックス指数のチャートを見ると、RSIが高いところで買ったとしても、その後も上げ相場が続いているから、ちゃんと儲かっていることになりますものね。
高橋 そうでしょう? 株価が勢いづいて利益を得るチャンスの場面なのに、ずっと売りシグナルを出し続けることが多々あるんです。言い換えると、本来、買える場面でも売りシグナルを出してしまうんですよ。
ここで買わないでどうするって感じなのにねぇ。
高橋 まとめると、トレンド系のテクニカル指標でトレンドが強いことが確認できる場面では、モメンタム系の指標は50%以上の範囲、あるいは50%を下回った範囲で行きつ戻りつして見せるんですよ。
う〜ん、なんともややこしい話ですね。
高橋 そうなんですよ。だからモメンタム指標が50%以上の範囲だけ、あるいは50%以下の範囲だけで推移し出したら、それまでのトレンドが継続するだけでなく、さらに勢いづくと判断します。
上げ相場なら上げが続くだけでなく、さらに勢いよく上がるってことですね。
高橋 はい。それと、もし、持ち合い相場が展開した後で、RSIが50%以上の範囲を行きつ戻りつといったような動きをし出したら、上昇トレンドが始まったと判断することもできます。
持ち合い相場というのは、株価が上下一定の範囲内で上げ下げしている、ボックス相場とも言われる状態のことですね。
高橋 おっ、ボックス相場なんて、専門用語が出てきましたね。ええ、その通りです。
なるほど。相場の状態によっては指標に「ダマシ」が出ることもあるから、トレンド系の指標とモメンタム系の指標を併用することが必要なんですね。
高橋 その通りです。さて、もうひとつ、私ならではのコツをお教えしましょうか。
ええ、ぜひともお願いします!
高橋 RSIのようなモメンタム系の指標では、株価が前回の高値を更新したにもかかわらず、モメンタム系の指標が高値を更新しない跛行(はこう)現象が起きる場合は、トレンドが反転するサインとして捉えるんです。
跛行(はこう)現象って、聞いたことのない言葉ですが、いったいどういうことですか?
高橋 釣り合いの取れない現象とでもいいましょうか。
と言われても、今ひとつピンと来ないんですけど…。
高橋 たとえば、株価がその前の高値を更新したとしましょう。前の高値の時よりも今の高値の方が高かったら、今のほうが「売ったほうがいい」と判断する可能性が高くなるかもしれませんよね。
言われてみれば、そうかもしれませんね。
高橋 だとすると、前回の高値の時にRSIが70%だったとしたら、今回のRSIは70%より高くなりそうな気がしませんか?
それも、言われてみれば、そうかもしれませんねぇ。
高橋 なのにRSIが、たとえば65%だったら、どう思います?
なんだかバランスが悪いですね。
高橋 そうでしょう? これが跛行(はこう)現象です。この跛行現象は、前回高値をつけた時よりも、今のほうが需給関係が劣っている、つまり前回よりも少ない買い勢力で、高値を更新したということを表しているんです。
前回、高値を更新した時よりも「買いたい」と思う人が少なくて、株価の動く勢いも弱くなっているってことですね。
高橋 そう考えてもいいと思います。少ない買い手で株価が上がるのは、それと同時に、売り手が少なくなっているからです。
買いたい人が減っているにも関わらず、株価は前より上がっているんですね。
高橋 その通りです。そうなってくると、「今のうちにこの株を売りたい」と思う人が増えてきますよね。その結果、株価が下がることになるはずです。
なるほどね。ということは、逆に、下降トレンドの時に、株価が前回の安値を更新したにもかかわらず、モメンタム系の指標が安値を更新しない場合にもトレンドが反転する可能性がありますね?
高橋 ええ、そうです。
テクニカル指標って、奥が深いんですねぇ。
高橋 テクニカル分析のおもしろさがおわかりいただけたようですね。
わかったと言いますか…、要するに、中国はモメンタム系の指標の売り買いのサインが使えるけど、インドはダマシが出ているからRSIの通常の使い方はフィットしにくいってことですよね。それと、インドはトレンドが強いと判断するってことでしょう?
高橋 いや、まあ、結論を言うとそうなんですけどね…。先ほども言いましたが、RSIのダマシをトレンドの判断に活かす方法は、一般的に使われている方法ではないんです。
高橋さんなりの分析方法ですものね。じゃあ、私も私なりのテクニカル分析で売買を判断する方法を見つけてみようかな。
高橋 それもいいかもしれませんよ。しばらく新刊の執筆のため、休載させていただくので、ここはひとつ、じっくり勉強して新たな判断方法をあみ出してみてください。
わかりました。生まれ変わった私を見ていただけるように頑張ります。


しばらく本連載は休載致します。

「成功するインド株著者 高橋正樹 氏 特別インタビュー」 記事一覧
  第1回 インド株を買うことはできるのですか ?
  第2回 インド株って何 ?
  第3回 気になるインドとパキスタンの関係はどうですか ?
  第4回 超大国成長市場、インドと中国‐‐‐投資先としての魅力を教えて下さい。
  第5回 「カースト」がインドの経済発展を阻害しませんか ?
  第6回 インドの通貨制度について教えて下さい。
  第7回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その1−
  第8回 インドの労働争議は経済発展に影響しませんか ? −その2−
  第9回 インドの銀行株について教えて下さい。
  第10回 インド株ADR(米国預託証券)の投資のコツを教えて下さい。
  第11回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その1−
  第12回 インド株と中国株はどちらがお買い得?---インドと中国の株価形成の違い −その2−
  第13回 金融派生商品(デリバティブ)の使われ方
  第14回 『超大国の成長市場』の株価判断
  第15回 「イメージ・トライアングル」の使い方
  第16回 「銘柄の投資価値」と「市場の期待」をイメージする
  第17回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その1−
  第18回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その2−
  第19回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その3−
第20回 「超大国の成長市場」のテクニカル分析 −その4−
著者近影 著者PROFILE
高橋正樹 たかはし・まさき
現職は「岡三証券・アジア情報館・シニアストラテジスト」。
元:アイザワ証券投資リサーチセンター・アジア担当ストラテジスト(本書執筆時)。
1963年生まれ。
日系投信会社、米系投資顧問会社を経て、2005年10月より現職。
ファンドマネージャー時代の全米運用パフォーマンスランキングは、2002〜2003年の2年間でアジア株部門が100社中35位、インド株部門24位(2003年のみでは12位)。この成績で注目を集め、日本では数少ないインド株投資経験者としても知られる。インド証券取引所の招きで精力的にインドの企業訪問をするなど、インドの最新情報にもくわしい。
国際公認投資アナリスト
日本証券アナリスト協会検定会員、検定テクニカルアナリスト


書影
書籍DATA
The Secret Of Success For The Indian Equity Investment
成功するインド株
出遅れない・失敗しない投資のための基礎知識
高橋 正樹 著
定価 1,575円
判型:四六判/並製
ページ数:192ページ
初版年月日:2005年08月23日
ISBN:4-7572-1141-4
 
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