特集
水道橋博士
×唐沢俊一
特別対談「博士の異常な健康」鑑定!
第4回 ファスティング(断食)
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第4回 ファスティング(断食)
  第5回 バイオラバー
  第6回 博士の愛した加圧式
書籍DATA
博士の異常な健康

博士の異常な健康
水道橋 博士 著
四六判・並製・306ページ
ISBN 4-7572-1248-8
定価 1,365円
 
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 稀代の健康マニア=水道橋博士(浅草キッド)が贈る、前代未聞の「異常」な健康読本がついに完成!

 博士がすべて自ら体験取材して書き下ろした本著は、目から鱗の一冊になること間違いありません!

 『健康本とは、死をゴールと見据えた「遺書」であり、生への執着を後世に残す「医書」である。そして、この本の目指すところは、完全なる実用書であり、有限の貴方の余命すらも、劇的に変えうる可能性もある、“平成の解体新書”を自負するものだ』。
 
唐沢 ファスティングは友達の漫画家にもやっている人がいますが、痩せる人とそうでない人が結構分かれるようですね。
博士 個人差はありますね。ただ、大抵のファスティング指南書に書かれているように、基本的にはダイエット目的でするものではありません。体内浄化というか、内臓を休ませて、本来の機能を呼び戻そうっていうのがファスティングの趣旨です。ファスティングに関して、まず唐沢さんにお聞きしたかったのが、今、何故これほどまでにファスティングが注目を集めているのかということなのです。
唐沢 おそらく世界中で唯一、日本には「モノを食べない方が体はキレイになって長生きする」という考え方があるからでしょうね。もちろんベジタリアンなんかは他の国にもいますが、食べる量を減らすことが自分の体を正常に保つことにつながると考える不食主義、減食主義は、日本人独自のものだと思います。
博士 中国の精進料理は?
唐沢 精進料理はそもそも仏教の考え方が基になっている、いわば宗教上の戒律じゃないですか。でも日本人の場合は、宗教云々に関係なく、多くの人が断食を肯定的に捉えている。これは日本人独特のケガレ意識による潔癖症的性質によるものなのではないかと思っています……。特に最近は、その傾向はより強くなってきているようです。だからこそ、博士さんがこの中で取り上げた『人は食べなくても生きられる』(以下、『不食』)みたいな本が出てくるわけで(笑)。
博士 来ましたねぇ(笑)。実はこの本のことも書きたくて、わざわざファスティングの章を作ったくらいです。
唐沢 そうだったんですか(笑)。
博士 もちろん確信犯的に書いていますが(笑)、僕はあのタモリさんが不食を実践していると聞いて興味を持ちました。でもこれ、間違いなくトンデモ本ですよね?(笑)
唐沢 ですね。だってこの前、と学会の人間がこの人と同じテレビ番組に出たら、楽屋に置いてあった弁当を思いっきり喰っていたらしい(笑)。
博士 ハハハハ(爆笑)。この本の中でも微食はしているって書いていますよね。
唐沢 結構ジャンクフードも食べているみたいです。で、この人、『不食』の後に『不眠』っていうのを出して、その後にもう1冊出すって言うので、俺はてっきり息をしないのかと思ったら、今度はセックスをしないんだって(笑)。それだったら誰だってできるよ!
博士 あははは。俺の友達でもそれくらいのレベルの人は何人もいますよ(笑)。
唐沢 しかもセックスをしないっていうのも、「本当のセックスは肉体ではなくて精神でするものだから、精神的なエクスタシーを一度マスターすれば肉体的な交わりは必要ない」ってことらしくて。ただ、それは最近思いついたことで、本に載っている日記を見たら女とヤリまくっている(笑)。
博士 かなりのトンデモだなぁ(笑)。
唐沢 大体この『不食』にしたって、最後のところにテレビ局に向かって俺を実験するために金を出せとか書いているし。普通だったら研究施設や大学に言いますよね?
博士 ですよね(笑)。でもこの本は最初の導入部分を、「羊のドリーが啓示する可能性」と題して、「クローン羊のドリーは1個の乳腺細胞を非栄養価状態に置いて、死ぬ直前までの栄養不足に追い込むことで、逆進化がはじまり受精卵になった」というところから始めているのが巧いですよね。
唐沢 そうなんですよね。非常に怪し気なデータですけど、自分の不食の理由づけに巧く使っている。「波動」なんかもまさにこれと同じで、それが本当に信頼できるか否かは別にして、なにかデータらしきものを最初に持ってくると、人はなるほどと信じてしまう傾向がありますからね。実際には、そもそも逆進化って概念がトンデモですよ……(笑)。
博士 僕もこの本に心酔しているわけではないけれど、「人は死に近づくために成長しているんだ。成長すればするほど人は死に近づく。じゃあ人間に与えられた最初の中毒は何か。それは食ではないか」という思想そのものは、哲学書として読んでも、非常に面白いですよね。
唐沢 面白いですねぇ。ただ最初に言ったように、日本人には食を断つということへの理想が根強くあるとはいえ、産經新聞社から出た『食の政治学』なんかを読んでみると、やっぱり怪物みたいに仕事をした人間って、みんなものすごく食欲旺盛ですよ。この前、太秦で映画を撮った時に、市川崑監督の話になって…、あの人は80歳を過ぎた今でも、三食、肉を食べているそうです。黒澤明監督もかなりの肉好きでしたしね。
博士 市川監督なんて肉を食べるだけじゃなくて、タバコもガンガン吸い続けていますからね。まさに喫煙派にとっては生きる伝説ですよ。
唐沢 あと、小松左京さんもそうですね。しかも、みんな歳をとってなお旺盛な創作意欲があるのがすごい。
博士 あのへんの超人が日本の健康を遅らせていますよ(笑)。話は戻りますが、日本人のダイエット信奉はいつ頃から始まったものでしょうか?
唐沢 実は昭和40年代までは、痩せるよりもむしろ、貧弱な体に肉をつけて立派な体格にしたいという人の方が多かったんですよ。ホラ、昔は「夏痩せ」とかよく言ったじゃないですか。
博士 そういえば、確かに最近は言わないなぁ。
唐沢 その頃の『サザエさん』を読んでみると、かならず毎年、夏痩せでまた痩せたっていう話が出てきますからね。
博士 痩せるのはネガティヴなことだったんだ。
唐沢 その価値観が逆転したのは、おそらく着る物の変化が原因だと思います。それこそ『サザエさん』を見ても分かるように、その頃はまだ日常的に浴衣や和服を着る習慣が残っていたじゃないですか。和服を着る場合、帯をカッコ良く締めるには、ある程度お腹が出てないとダメなのです。
博士 つまり、美意識の上でも太る必要があったわけですね。
唐沢 それがどんどん洋服に移り変わっていって、ベルトの穴の位置とか気にし出して、急に日本人の間でダイエットに対する依存症みたいなのが出てきたのだと思います。
博士 なるほど〜。あともうひとつ気になっていたのが、石原都知事もそうだけど、三枝成彰さんとか林真理子さんとか、クリエイター系の人がファスティングにハマる傾向がありますよね?
唐沢 神経がすごく研ぎすまされるからでしょう。
博士 あー、それは分かる。
唐沢 知り合いのデザイナーで、定期的に過激なくらい断食する女の子がいますが、やっぱり断食した方が良い作品ができるって言っていました。
博士 確かに日常生活では辿り着けない、哲学的、思索的な領域に入れる感じはありました。
唐沢 なにしろ栄養を与えないというのはかなり肉体にとっては苦痛なわけで、その分、脳内麻薬が出るようです。要するにSMの快楽と一緒なんです(笑)。ハマりすぎると今度は妄想が出てきちゃうのもSMと同じ。神様が話しかけてきたとか言い出したりして(笑)。
博士 断食日記が日を追うごとに、妄想日記になるわけだ(笑)。
唐沢 いかに自分の体が浄化されてきたか、とかね。なので、ファスティングそのものはトンデモとは言えないけど、ファスティングの末にトンデモの世界に入っちゃうことは多々あります。
博士 なるほど。実は、本には5年前の体験記を載せたのですが、今回もファスティングをもう一度挑戦しながら書きたかったのです。何故か堪え性が無くて出来なくて…。もしファスティングしながら書いていたら、もっと、この本もトンデモ世界で書けていたかもしれません(笑)。
唐沢 なんでそんなにトンデモの方に入りたいの?(爆笑)

つづく


「書評ほどオイシイ商売はない!?」 記事一覧
  第1回 発毛・育毛
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著者PROFILE
著者近影
水道橋博士 すいどうばし・はかせ (浅草キッド
1962年8月18日岡山県生まれ。
身長161センチ、体重53キロ、バスト91センチ、ウエスト79センチ、ヒップ90センチ、頭57センチ、首44センチ、足25センチ。
 1986年にビートたけしに弟子入りを果たし、翌年、玉袋筋太郎と漫才コンビ「浅草キッド」を結成。以降、テレビ、ラジオ、舞台での活躍に加えて、文筆家としても高い評価を獲得している。
 キッド名義の著書『お笑い男の星座1・2』(文藝春秋)はエンターテイメント・ノンフィクションという新たなジャンルを打ち立て、大宅壮一ノンフィクション賞の候補にも挙がる。個人名義での著書に『水道橋博士の異常な愛情』(青心社)、『本業』(ロッキングオン)。自称ルポライター芸人として、日々ペンを走らせる45歳。
著者近影
唐沢俊一 からさわ・しゅんいち
1958年北海道札幌市生まれ。カルト物件評論家。大ベストセラー『トンデモ本』シリーズを生んだ「と学会」の中心メンバー。執筆領域は古書・漫画・薬から落語・映画まで広範囲に及ぶ。どの分野でも「瑣末・無用な」「消費されてしまい残りにくい」知識やモノをあえてクローズアップし、独特の切り口で多くの支持者を持っている。学術誌からあやしげなオカルト本にまで至るその膨大な執筆ペースは独自かつ脳天気な日本文化史観を構成しており、業界人にもファンが多い。パソコン通信の時代から現在にいたるまで、ネットの世界での活躍も知られている。アスペクトから刊行している人気シリーズ『社会派くんがゆく!』をはじめ、『ウラグラ!〜ベスト・オブ・裏モノの神様〜』、『裏モノ日記』が好評発売中。またWebマガジン 社会派くんがゆく[RETURNS]では村崎百郎氏と宇宙最強!? 切り捨て御免の社会時評を展開中。近著『とても変なまんが』(早川書房)、『カラサワ堂変書目録』(学陽書房)、『トンデモ一行知識の逆襲』(大和書房 )などがある。その精力的な活動の詳細は「唐沢俊一『一行知識』ホームページ」へ。