特集
[連載]お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし
著者 金子由紀子さん インタビュー
第4回 捨てるだけでは、解決しない

大好評企画『持たない暮らし』著者金子由紀子さんインタビュー第4回はいよいよお片づけ実践編。アイテム別の処分の方法や増やさないコツについて、『持たない暮らし』の著者金子由紀子さんを囲んで、じっくり話し合ってみました。いくら捨てても、またゴミの山ができる、片づけても、片づけても、すぐに散らかる…、そんな負の連鎖から抜け出すために、わたしたちと一緒に考えてみませんか?

書籍DATA
持たない暮らし
金子由紀子 著
四六判・並製・224ページ
ISBN 4-7572-1321-2
JAN 978-4-7572-1321-0
定価 1,500円
 
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 いくら片づけてもすぐに散らかってしまう、モノだらけの部屋にストレスを感じている・・・そんなあなたのために、お金をかけず、すぐにはじめられて、いつの間にか部屋がキレイになる魔法の習慣をお教えします。

片づけが苦にならないようにするには?

♀  今回はお片づけ実践編、タイプ別の処方箋が詳しく書かれている第4章に関連したお話を聞かせてください。第4章ではアイテム別の処分の方法や増やさないコツが満載ですね。「自分を知ることが出来た」「本当に役に立った」という読者の皆さんのお便りも数多く寄せられています。ここでも、「ああしろ、こうしろ」というよりは「こういう方法もありますよ」という提案をされていますが…。

金子 そうですね。私はモノを処分する方法というのは、読者の皆さんが、それぞれご自分の住んでいる地域の中で、様々な方法を見つけられるのではないかと思っています。「三日で一掃!」などというのは、実は簡単にできます。モノを捨てることは、やる気さえ出せば、とても早いものです。でも次の日からまた昨日と同じ日常が始まります。同じように買って、同じようにダメにして、昨日までと同じようにモノを大切にしない生活が繰り返される。それではいくら捨てても、またゴミの山ができるだけで、ふと気が付くと、そんな自分の生活に虚しさを感じることはありませんか。

♂  耳の痛いお話です…。どこかに紛れてしまったり、うっかり捨ててしまったり、同じものを何度も買い直してしまうことがよくあります。我が家では比較的安い値段で手に入るもの、特に文房具や文庫本が多いような気がします。

金子 そうですねぇ。でもその気持ちはよくわかります。

♀  金子さんご自身は、もともと片づけは苦にならないタイプですか?

金子 いいえ、大嫌いです、掃除も嫌いですし(笑) 片づけたくないからモノを減らすというスタンスです。世の中を広く見渡すと、案外そういう考えの人は多いかもしれません。

♂  なるほど、ちょっと安心しました。僕も片づけは嫌いです。でも片づいていない状態はもっと嫌いです。ところが、わかっちゃいるけど、片づかない(笑) モノが好きだという人は、必然的に溜まる一方です。

金子 収納できるスペースが限られているのだから、どうしてもモノが好きなら、片づけも好きにならないとつらくなりますよね。

♀  それでモノを少なくして、片づけに煩わされないようにしていらっしゃるのですか?

金子 ただ自分一人で暮らしているわけではないので、どうしても子供のおもちゃや細かいものはあります。工夫を重ねて、片づけやすい家庭内でのシステムが確立してきました。それでやっと子供が片づけられるようになってきました。いつも家族みんなが片づけるときは楽ができるように心掛けています。

♀  それは素晴らしい。どんなシステムですか? 是非教えて下さい。

金子 まずオープンの棚に入れられるように蓋のできるケースを、きちんとサイズを測って購入しました。蓋ができる箱というのがポイントです。ケースひとつひとつに「ポケモンおもちゃ」とか「カードおもちゃ」といったように仕舞うべきモノの名前を書きます。そして、子供に床にバーッと散らかったものを片づけさせる時は、まず「大きいものから片づけて!」って号令を掛けます。それから、「本はここ、紙は資源ゴミのところ」といったように片づける場所を指示します。そうすると、最後に細かいものが残ります。それを一箇所に寄せて、固まりができたら「はい、分類して」って。最後に、掃除機でゴミを吸い込んで終わり。

♂  いやぁ、これは勉強になります。お子さんにはとても良い躾(しつけ)になりますね。一事が万事で片付けがきちんと出来るということは、しっかり自立した男性に成長しますよ、きっと。しかもそういう男性は将来間違いなくモテます。断言してもいいでしょう!

一同 (笑)

♀  そういうふうにシステムを作ると、家族全員が片づけるようになりますか。

金子 それはそれでなかなか難しいものです(笑) 我が家の場合、夫は「捨てない」人です。ただ「持たない」人でもあります。買わないからモノも増えないかと思うと、捨てないから減らない。それを勝手に捨てることはできないなと思って、静観しています。そう言いつつも、段々隅のほうに押しやったりして(笑)

♂  一ヶ所に寄せると捨てやすいですよね(笑)

金子 そうですね、集約すると。

♀  あちこちに散らばっていると何から手を付ければ良いかわからないから、まず一ヶ所に集めると良いのですね。

金子 大きさ別に仕分けられたら、最高です。そして、大きなものから順番に片づけると効率も上がりますよ。

♀  とりあえず大きいものから、片づければ良いということですか?

金子 目立つものから。面積や体積の大きいものから片づくと、一挙に片づいた「ような」気がします。

♀  そうすると少しやる気が持続しそうですね。

金子 そうそう、それがとても大切なことだと思いますよ。

♂  掃除の時、僕は寝ていてくれって言われます。それが一番片づいている状態ですって…。完全に粗大ゴミ扱いです。トホホ(爆笑)



見える範囲の目標を立てる

♀  『持たない暮らし』の第4章を読むと、自分の傾向を知ることができて、どこから始めれば良いのかもわかるし、片づけが終わった後も、何に気をつければ良いのかがわかりますよね。

金子 とにかく再発防止!(笑) それがなによりも一番重要です。

♀  いわゆる「捨てる」方法を解説した本や「片づけ」の本って、その場だけのことで終わっちゃうものが多くて、再発防止策が出ているものって少ないですよね。

金子 「これからはモノを買わないように気をつけましょう」というアドバイスのある本はありますが‥。私、片づけの本が好きで、いろいろ読んできましたが、「このように片づけましょう、このように持ちましょう」と言われても、「その通りにできるんだったら、警察は要らないよ〜」って思います…。

♀  私の場合、その手の本を読んでも、なかなかやる気が出てこなくて困っています。ハウツーはなんとなくわかりますが…。

金子 読んだだけで、もうやった気になっちゃいません?(笑)

♂  夏休みの宿題や受験勉強と同じですよね、綿密な計画を立てて、それで勉強したよう気になって…。

♀  計画通りに実行できない自分に疲れて、いやになってくるというのもありますね。

金子 そうですね。たとえば、痩せようと思って、目標何kgって書くと、それだけでもういいやって思ってしまいそうでしょう。先日1年で20kg減量に成功した人のブログを読みましたが、その時に気が付いたことをお話しましょう。そのブログを書かれている方は、常に1kg痩せるのが目標で、1kg痩せたら、もう1kgというように、目標体重が常に「現在よりマイナス1kg」と書いていました。それを継続していたら、1年後に結果マイナス20kgだったと…。「そうか、見えるところに目標を設定すると、目標を達成しやすいのか」と目から鱗がおちる思いでした。

♀  近いところに目標を立てることが重要なのですね。

金子 そうそう。いきなりマイナス18kgと言われてもねえ。1kgだったらすぐできそうじゃないですか。

♀  目標設定を最初から下げて、積み重ねていけば良いということですか?

金子 そう、一流のアスリートって、実は皆そういうことを実践しているようですよ。

♂  おお、これは僕の出番ですね(笑) 実は学生時代、ずっと硬式野球のピッチャーをやっていました。とにかくリトルリーグ(準硬式)の時代から練習がとても厳しいチームでした。いきなり「全国制覇」が目標でしたから。しかも悪しき根性論全盛の時代で、40分走といって、40分間ひたすら走るという練習や腕立て100回、スクワット300回なんて練習はつらい記憶以外何も残っていません。でも高校時代に肩の故障があって、投球練習は工夫しました。上級生になって、自由度も増しましたし。 まず内角高めに5球連続ストライクを入れる。それが出来たら、バッテリー二人は大声で吼える(笑)次に外角低めに3球連続で糸を引くようなストレートが決まり、キャッチャーの構えたミットにボールがバチンと音を立てて、吸い込まれるとまた歓喜の声を上げる。この練習方法が成果を上げてから、チーム全体が小さな目標をたくさん立てて、短時間集中するというスタイルが練習の基本になりました。

♀  それと同じ理論ですよね? 1個引きだしが片づいたら、もう1個。

金子 そうそう、まずひとつを確実に片づけることが大切ですね。習慣の話と同じですが、1ヶ所だけ綺麗になると、連鎖反応的に他も片づいていきます。ひとつできるようになると、自分の中に成功体験と自信が生まれる。他のことにも抵抗なく取り組むようになる。ビジネスの現場でも、しばしば語られる理論が当てはまってくるような気がします。

♀  本当にそうですね。この本を読んでいて、気が付いたことですが、理論がしっかりしているから、すぐに腑に落ちて、納得出来るのでしょうね。

金子 この本をきっかけにして、気持ちよく皆さんにお片づけをして頂ければ最高です(笑)

♂  実はこのインタビューをする前、デスクまわりを片づけてみました。目につく大物から片づけて、あっちの棚、こっちの棚、ハイすっきり。必要なモノがすぐに取り出せるようになりました。

金子 その間って何分くらいでしたか?

♂  10分も掛からなかったと思います。

金子 ですよね。実際は、そんなに時間ってかからないものです。あとは段取りとちょっとしたコツを習慣として身につけることが問題解決への一番の近道だと思います。



つづく


「路地裏の経営学」著者町田秀樹氏インタビュー 記事一覧
  第1回 なりたい自分に近づくために、自分の持ち物を編集する
  第2回 知恵と工夫があれば、モノはそんなにいらない
  第3回 ゴミの少ない人はカッコイイ!?
第4回 捨てるだけでは、解決しない
  第5回 心に余裕ができると、本当の幸せに近づく
PROFILE
著者近影
金子由紀子:1965年生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。
 暮らし方から健康、旅行、教育まで、幅広い分野で取材・執筆に携わる。総合情報サイトAll About japan「シンプルライフ」ガイド。10年に及ぶひとり暮らしの経験の中で、「少ないモノでゆったり暮らす」ことの心地良さに目覚める。二児の母となった現在もシンプルライフを実践し、等身大の生活術が共感を呼んでいる。著書に『毎日をちょっぴりていねいに暮らす43のヒント』『ちょこっと和のある暮らしが なんだかとてもワクワクする!』(共にすばる舎)『暮らしのさじ加減』(リヨン社)等、監修に『スッキリ朝とゆったり夜』(PHP研究所)がある。