特集
[連載]お部屋も心もすっきりする 持たない暮らし
著者 金子由紀子さん インタビュー
第3回 ゴミの少ない人はカッコイイ!?

好評連載『持たない暮らし』の著者金子由紀子さんを囲んで、お話を伺う企画の第3弾!今回は持たない暮らしへの意外な近道やダイエットとの共通点についてお話を伺ってみました。自然とモノが減っていく“7つの習慣”を身につけるために、あなたも小さなことからはじめてみませんか?

書籍DATA
持たない暮らし
金子由紀子 著
四六判・並製・224ページ
ISBN 4-7572-1321-2
JAN 978-4-7572-1321-0
定価 1,500円
 
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 いくら片づけてもすぐに散らかってしまう、モノだらけの部屋にストレスを感じている・・・そんなあなたのために、お金をかけず、すぐにはじめられて、いつの間にか部屋がキレイになる魔法の習慣をお教えします。

リバウンドの仕組みはダイエットと同じ

♀  『持たない暮らし』の第3章から、具体的にモノを減らしていく話に入っていきます。そこでお伺いしますが、本文中にある“7つの習慣”に注目されたのは、金子さんがご自身の生活を振り返られて、「習慣」を変えることが一番大切だとお考えだからですか?

金子 そうですね。この“7つの習慣”がライフスタイルとして、自分の中に組み込まれてしまえば、無理なくスッキリとした暮らしに近づくのだと思います。でもそこは人間ですから、7つの習慣が定着するまでが大変ですけれど…。できることから、最初は1つで良いと思います。本当に小さなことでも。1個減ると他の2個3個と減らすことができるようになりますよ。たとえばレジ袋をもらわなくなると、他のモノももらわなくなる。変なティッシュとか変なうちわとか(笑)

♀  たしかに、1個もらわなくなると、自分が今までもらっていた他のモノにも目がいくような気がしてきました(笑)

♂  ほんまかいな(爆笑)でも確かにそういわれてみるとそんな気がしてきます。

金子 そうそうその調子(笑)まずは意識することが大切なのね。そうすると、確実にもらわない人になっていきます(笑) 安易にモノをもらわないという思考回路ができると、すぐに生活習慣に変化があらわれます。1日かけて全部捨てても、結局その思考回路は身につきません。いったんスッキリはするけれど、毎日じわじわやっていくほうが良いと思います。長い目で見ると、生活習慣として、しっかり着実に身に付いて、しかもリバウンドしない。ほんと、これってダイエットと同じだなぁと思いますよ。

♀  一年に一度徹底的に捨てていた金子さんが、モノの買い方や入手方法を見直すという方向にいったのはそういうことだったのですね。とにかく毎日少しずつ減らす、増やさないが基本ですね。

金子 そうです。一度にドバッと捨てるよりも、毎日ちょっとずつ入れないようにするほうが単純に楽ですよ。生活習慣にさえしてしまえば、捨てるものが減ります。そして気が付けば、年末にドバっと捨てるということもなくなります。

♂  たしかに、伺ってみるとそのほうが楽そうですね。よしっ、今日から7つの習慣を我が家の家訓にしよう(笑)

♀  ほんまかいな(爆笑)突っ込み返してみました。えへっ。

♂  その前に奥さんに相談してみます(爆笑) 考えてみるとずいぶん無駄なことにお金や時間を使っていたような気もしますし(苦笑)

金子 お金もかからないし、手間もかからない。モノが出て行くルートを自分の生活習慣の中に作ることが大切です。特に紙は重要ですよ。要らない紙はここに置く→溜まる→束ねる→捨てる、というようなサイクルを習慣にしてみてください。するとスムーズにモノが家から出て行ってくれるようになりますよ(笑)

♀  よく片づけって、しまうべき場所が決まっていないものが溢れるという話を聞きます。ということは捨てるまでの行動パターンを確立することがモノを持たない暮らしの第一歩なのですね。

金子 その通りです(笑) ゴミの日には必ず何かを捨てることから始めると、生活習慣として身につきやすくなるでしょう。

♀  家族でルールを決めて、モノが出て行くルートを作る。それを家族に「ああそうなのね、じゃこれはここに置く」と意識するように仕向けるわけですね。

金子 その通りです。うちでは、子供が使った折り紙や不要になった紙ゴミを新聞紙の中に混ぜて、資源ゴミの日に出しています。そうすると決められた日に出す可燃ゴミがガクンと減ります。もし家にお庭があれば、生ゴミも埋めちゃうのになぁって思うこともありますが、マンションだからそれはできません。

♂  我が家は今どき珍しく新聞を3紙も購読しています。出版社勤務ですから、ご存知のようにただでさえ、紙まみれの毎日なのに…、そこに新聞、チラシ、DMの量は一般家庭の3倍(苦笑) そこで何とかしようと考えました。きっかけは我が家にも『持たない暮らし』の本がやってきたからです(笑)

金子 それはそれは、お役に立てて、光栄です(笑)

♂  そこで、新聞を読んだら、すぐここに入れる、束ねる、金曜日には資源ゴミで出すという行動パターンを夫婦で徹底しました。最近になって、ようやく可燃ゴミを減らすことができるようになりました、45歳にしてはじめてリサイクルに目覚めたのかもしれません(笑)

金子 そうそう、新聞をきちんと捨てられるようになると、家の中はものすごく片づきます。単純にモノを減らすには新聞を取らないということが最良の選択かもしれません。でも新聞でないとわからないことや読めないものもありますしね。

♂  新聞とチラシ、そして書き損じの原稿、ゲラ、資料も紙・紙・紙…。この膨大な量の紙をどうするかが、我が家における最大の問題でしたから…(苦笑)

金子 モノを減らす大切な要素として紙が一番大きくて、その最たるものが新聞、次は雑誌、そしてDMの順ですね。家族の数の分だけ、お知らせの数も増えますし。



無意識のうちにエコが身に付くようになる

♀  なるべく資源ゴミに出すようにして、普段のゴミを減らしていると、徐々にエコを意識した暮らしになっていくような気がしますが、金子さんの場合、それを意識的に実践していらっしゃるのですか?

金子 エコであればあるに越したことはありませんが、それより私の場合は見栄から始まったのかもしれません(笑) 昔住んでいたアパートに同じくらいの年齢の女性がいて、その人がとっても綺麗な方でした。しかもおしゃれだし、感じも良いし、ほんとうに素敵な人なの。ベランダにはお花とか飾ってあって…。朝ゴミを出す時、私は大きな袋を持って、ガサガサと音を立ててゴミを出しているのに、その人はいつも小さなレジ袋一個だけ。「カッコイイ〜! 私って、頭悪そう…」とその時思いました(笑) それで、せめて頭悪そうに見えないくらいになりたいなと思って、かさばるものを減らさなくちゃって思ったことがきっかけですね。それからゴミを減らすことを強く意識しました。だから、エコというよりは見栄からですね(笑)

♀  見栄ですかぁ(笑)見栄と同時に「ゴミの少ない女はカッコイイ!」という美意識が芽生えたのですか?

金子 単純にその人がとっても綺麗だったからです(笑) たとえば水筒を持って歩いている女性が最近増えましたよね。バッグから水筒がのぞいている人を見ると、決まってセンスの良い美人です(笑) OL生活を送っていて、水筒を持って歩く習慣があるということは、毎日ウチに帰ったら、水筒を洗って、綺麗にしておかなくてはいけませんよね。毎日それが習慣としてできる人は、一事が万事で、生活全般に、また自分自身にも手をかけられるのだろうなと思います。そういう意味でも、「ゴミを出さない女はカッコイイ」と思います。

♀  余裕があって、いろいろなところに気配りができる人って、だいたい素敵に見えますよね。

金子 実はアパート暮らしのその頃の私って、起きてパジャマのまま、顔もロクに洗わずにキーボードに向かったりしていて。ライターって、そういう人が多いじゃないですか。

♀  だいたいパジャマでゴミ出しに行ったりとかすると、もうそれだけでダメな感じがしますよね(笑)

金子 その当時のゴミ袋の中身と言えば、ペットボトルをそのままつぶしもせずに入れていたり、牛乳パックもつぶさずにそのままゴミとして出していたり、今考えるとだらしない、情けない、気力がない。私ってなんてかわいそうなのって、いわば自己憐憫が常の状態だと、生活習慣や行動パターンもそうなってしまいます。だから、モノを捨てられないという気持ちや状態が私にはよくわかります。でも、持たない暮らしが実践できるようになってからのほうが、忙しさはあまり変わらなくても、確実にこころにゆとりが出てきました。

♂  僕の場合、持たない暮らしを意識してから、まずペットボトルに入ったお茶を買わなくなりました。ディスカウントショップで安く売っているし、持ち運び便利だし、とか何とか言っているわりには飲みかけのペットボトルをデスクに置いたまま、外出することもよくありました(苦笑)

♀  でもペットボトルって捨てる手間がありますよね、包装されているプラスティックをベリベリ剥がして…

金子 それから、つぶして…、結構力もいるし、これもまた面倒だ。

♂  キャップはキャップでゴミの種類がまた違う(爆笑)

♀  と考えると、自分でお湯を沸かして淹れるほうがよっぽど楽だということに気が付きそうなものですね。あれっ、何で今まで気が付かなかったのかしら(爆笑)エコであるとかロハスがおしゃれだとか、流行を追うような感じで、概念や生き方に縛られるのではなく、単純にこういう自分でありたいと思うほうが、持たない暮らしを続けられそうな気がしてきました。

金子 そうですね。男性で水筒とか持っていらっしゃる人を見ると、カッコイイって思いますよ。

♂  水筒持って、チョイモテ、オヤジ(笑)実は今日水筒持っていますよ。でもモテナイ暮らしだなぁ(爆笑)

♀  でもそんなふうに気を使っている人はカッコイイとか、素敵だと言われれば、自然と身につくかもしれませんよ(笑)明日から水筒を持っている男性がそばにいたら、読者の皆さん、そんな男性を褒めてあげましょう(爆笑)

金子 まあ、人によってできることとできないことがありますからね。でももし毎日、しかもどこでも「ゴミを出さない人がカッコイイ」って言われたらどうでしょう?「よぉ〜し、やってやろう!」って気になりませんか?(笑)

♂  何事も減点主義で暮らしていると、息苦しいものです。やっぱりどんな時でもプラス志向でなくちゃ…。何だか生活習慣が変わりそうな気がします。誉められて育つタイプなので…(笑)



「絶対○○しなくては!」は失敗のもと

金子 そういえば、今、お掃除本がブームですよね。でもその手の本を読むと段々息苦しくなってきませんか? スピリチュアルな要素と絡んでいることも多いので、余計にそう思うのかもしれませんが…。掃除をして宝くじが当たった!とかいわれてもねぇ(笑)

♂  ○○石で膝の痛みがスッキリとか○○で難病克服っていわれても、その背後にある人の弱みに付け込むビジネスが見え隠れして、かえって息苦しく感じてしまいます。

金子 そうですね。時代がそんな感じになってきているのかなぁ。景気が上向いたとはいえ、依然経済状況は厳しいですからね。実は私、女性のダイエットの傾向が、バブルが崩壊して、景気が悪くなった時から明らかに変わったと考えています。仕事で昇進、昇給があまり期待できないのなら、結婚に活路を求めよう、そのためにはダイエットだ、ということなのでしょうか。それに近いものを今の掃除に感じます。掃除をよくする人は確かにカッコイイなって思うし、えらいと思いますよ。でも、たとえば「私はこんなに掃除しているのよ、それに比べてあなたはダメね」というようなことになってしまうと、何だか妙な感じがしてきます。

♀  『持たない暮らし』の第3章では、7つの習慣が箇条書きで書かれていますが、読んでいて「何々しなきゃいけない」とか「こうしなきゃダメです」という雰囲気はまったくありませんよね。

金子 ダイエット本の制作に関わっている時に、ダイエット指導専門のお医者さんに聞いたところ、「絶対」とか「必ず何々しなければいけない」という言葉を使うと、百発百中失敗するそうです。

♂  気持ちも行動も強制されたことの反作用で、かえって食欲がモンスターのように旺盛になりますよね。結果ダイエット失敗。リバウンドして、増えたのは体重と体脂肪、減ったのは貯金だけ(笑)

金子 そうです。だからそういうことを避けるために「なるべく」食べないようにしましょうとか、「なるべく」運動しようとか、そういう言い方をするそうです。「絶対にこれを達成する」という助言や指導はとても危険だそうです。

♀  プレッシャーを与えて続けていることが最大の敗因ということでしょうか。

金子 そうでしょうね。延々と続くプレッシャーはそもそも体に悪いし(笑)

♀  実は私、この本を読み進めるうちに「だからすんなり言葉がこころに入ってくるんだぁ!」と思った瞬間があって、それは"今日できなくたって良いじゃないですか"という一節に触れた時でした。

金子 今日できなくても明日やればいいし……。ただ、その明日は永遠に来ないかもしれないんですけども‥‥(笑)。



つづく


「路地裏の経営学」著者町田秀樹氏インタビュー 記事一覧
  第1回 なりたい自分に近づくために、自分の持ち物を編集する
  第2回 知恵と工夫があれば、モノはそんなにいらない
第3回 ゴミの少ない人はカッコイイ!?
  第4回 捨てるだけでは、解決しない
  第5回 心に余裕ができると、本当の幸せに近づく
PROFILE
著者近影
金子由紀子:1965年生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。
 暮らし方から健康、旅行、教育まで、幅広い分野で取材・執筆に携わる。総合情報サイトAll About japan「シンプルライフ」ガイド。10年に及ぶひとり暮らしの経験の中で、「少ないモノでゆったり暮らす」ことの心地良さに目覚める。二児の母となった現在もシンプルライフを実践し、等身大の生活術が共感を呼んでいる。著書に『毎日をちょっぴりていねいに暮らす43のヒント』『ちょこっと和のある暮らしが なんだかとてもワクワクする!』(共にすばる舎)『暮らしのさじ加減』(リヨン社)等、監修に『スッキリ朝とゆったり夜』(PHP研究所)がある。